ユングの知恵を学ぶ 深層の八類型

深層の八類型(参考文献:ユング心理学入門 河合隼雄 P15-28)


みなさん、こんにちは。Unconscious noteへようこそ。

前回までは、アリストテレスやフロイトを通じて、心の階層や無意識のメカニズムを学んできました。今回はさらに一歩進み、クライアントの「心の癖」を圧倒的な解像度で見抜くための羅針盤を手に入れます。河合隼雄先生の『ユング心理学入門』の核心である「4つの心理機能」と、それが外向・内向と結びついた「八つの基本類型」の解説です。

Unconscious noteなりにわかりやすくまとめてみましたので参考にしてみてください。

P15-28を参考に記しております。


【主機能と劣等機能の対立】

ユングは、各個人がおのおの最も得意とする心の活動形式、すなわち「心理機能」を持っていると考えました。

心理機能には、思考・感情・感覚・直観という4つの根本機能があります(p.15)。例えば一つの灰皿を見ても、それが瀬戸物であると概念を考えるのが思考、感じが良いか悪いかを決めるのが感情、形や色を的確に把握するのが感覚、そして、そのものの属性を超えた可能性をもたらすのが直観機能です(p.15-16)。


「思考と感情」「感覚と直観」は対立関係にあります。最も依存している心理機能を主機能、その対立機能を劣等機能と呼びます。

ここでプロとして絶対に押さえておくべきなのは、

「劣等機能とは未分化なものをさすのであって、弱いものをいうのでない(p.17)」

という事実です。むしろ、制御を超えて突然現れる強力なバグとして私たちをおびやかします。すべてを知的に処理する思考型の人が、つまらぬ美談に涙を流すような未分化な反応がこれに当たります。



【合理機能(思考・感情)の深層】

感覚と直観が何かを内に取り入れる機能であるのに対し、思考と感情はそれらを基に概念規定や良し悪しの判断を下すため、ユングはこれを「合理機能」と呼びました。それでは、合理機能の4タイプを見ていきましょう。

  • 外向的思考型:

    ユングは思考を「与えられた表象内容に概念的なつながりをもたらす心理機能」と定義しました。外向的思考型は、自分の生活を知性の与える結論に従わせようと努めます。例外を許さぬ堅い図式を守ろうとしますが、感情を強く抑圧しているため、バグが起きると「つねに論理的な学者が反対学説に感情的反発をしたり、堅い道徳家が下品な女性に魅せられて破廉恥な事件に巻き込まれる」といった極端な反転を起こします。

  • 内向的思考型:

    新しい事実の知識より、新しい「見解」を見出すことを得意とします。ユングは代表例にカントを挙げました。思考は独創的ですが伝達が難しく、いらだちが未分化な感情と結びつくと攻撃的になったり、逆に素朴な無邪気さ(オッチョコチョイ)として現れたりします。瞑想中に園丁から「お前は誰だ」と怒鳴られたショーペンハウアーが「ああ、その答がわかってさえいれば!」と答えた逸話が有名です。

  • 外向的感情型:

    感情機能とは、与えられた内容に一定の価値を付与する判断作用です。外向的感情型は、皆が「よい」と思うことに自分の気持ちを一致させ、対人関係を円滑にする達人です。しかし客体の意義が強くなりすぎると主体性を失い、浅薄になります。すると、抑圧されていた劣等思考が頭をもち上げ、「宗教は阿片にすぎない」「妻は女中にすぎない」といった過激な断定で価値を引き下ろし始めます。

  • 内向的感情型:

    「静かな水は深い」の言葉通り、外見は控えめで無感動に見えますが、内面に細やかな深い感情を秘めています。しかし、客体との関係があまりにもなくなると、自分の感情判断を押し通すためにわがままとなり、その情熱が子どもへと投影されると「愛情深い母親に育てられた問題児」を作り出してしまいます。表現のできなさと劣等思考が入り混じり、精神衰弱症になる人もいます。(p.20-p.23参照)



【Slide 8-10:非合理機能(感覚・直観)の深層】

次に、理性の枠外でありのままを知覚する「非合理機能」の4タイプです。思考・感情型が「なぜそんなことが起こりうるか」と悩むのに対し、彼らは「ともかく起こったのだから(just so!)」しかたがないと現実を受け入れます。

  • 外向的感覚型:

    感覚は生理的刺激を知覚に仲介する機能です。外向的感覚型はまさにリアリストそのもので、その時その場の現実の享受者です。しかし、この機能のみにあまりにも偏るときは、抑圧された直観の被害をこうむります。普段は極めて現実的な人が、何か一つのことに関して、真に非現実的な迷信にとらわれてしまうのです。

  • 内向的感覚型:

    外界からの刺激そのものよりも、それによって引き起こされる「主観の強度」を頼りとしています。そのため周囲からは不可解に見え、皆が美しい花畑と見るものが恐ろしい燃え上がる火に見えたりします。しかし、見たものを他人に伝える創造性を持つときは偉大な芸術家となります。画家のシャガールが「私は内的現実(inner reality)を描いているのだ」と答えたように、内に存在する確かな現実をそのまま伝えているのです。

  • 外向的直観型:

    直観は、事物そのものよりも「その背後にある可能性」を知覚する機能です。外向的直観型は外的な物に対して可能性を求めて行動し、未完の大器を掘り出したりします。しかし思考や感情による補助がないと、一つの仕事が完成する前に次の可能性に気を取られ、「種はまくが、収穫は得られない」人になります。この傾向が強くなると、抑圧された感覚機能が制御を破り、自分の身体への囚われ(心気症)や恐怖症となって現れます。

  • 内向的直観型:

    自分の内界の中に可能性を求め、心像の世界を歩き回るため、外界に適応しがたい不可解な人です。周囲が最近の事件を話していても「あっ、そんなことがあったかな」とつぶやくほど外界に無関心です。しかし、表現手段を見つけた場合は独創的な思想家や宗教家として輝かしい成功を収めます。彼らを動かすのは未来への可能性であり、本来の傾向を無視して無理に実際的なことをやろうとすると、内的な摩擦のため神経症に陥ってしまいます(p.24-p.28)。


河合先生が最後に述べられているように、実際にはそれほど純粋な型はなく、いろいろな機能がからみ合っています。

クライアントの表面的な言葉に騙されてはいけません。彼らが頑固に守っている「主機能」の裏には、必ず本人をおびやかす未分化な「劣等機能」の影が潜んでいます。


コーチ・カウンセラーとして、目の前のクライアントが発する「バグ(突然の感情爆発や、突然の迷信への傾倒)」が、どのページの、どの劣等機能のSOSなのかを冷静に見極めること。それこそが、ユングの類型論をセッションで生かすための強力な第一歩となるでしょう。



4タイプ(8類型)引用ページ・特徴一覧表

講義の scannability(一目でわかる明瞭さ)を高めるため、河合先生のテキストの該当ページと特徴を完全に一致させた一覧表です。

タイプ(基本類型)該当ページ認知の特徴(引用に基づく解説)劣等機能(バグ)の現れ方
外向的思考p.19-20生活を客観的知性の結論や一般図式に従わせる。感情を軽視・抑圧する。反対学説への感情的反発、堅い道徳家が下品な女性に魅せられる等の破廉恥な事件(p.20)。
内向的思考p.20-21新しい事実より「新しい独自の意見・見解」を見出す(カント型)。伝達不能のひとりよがり、攻撃的・破壊的行動、オッチョコチョイな無邪気さ(p.20-21)。
外向的感情p.21-22与えられた内容に価値を付与する。環境の要求や皆の「よい」に感情を一致させる。客体重視で主体性を失うと、劣等思考が暴発し「〜にすぎない」と価値を踏みにじる(p.22)。
内向的感情p.22-23静かな水は深い。外見は冷淡に見えるが内面に深い同情や情熱、高い宗教性を秘める。わがまま、残忍さ。子どもへの投影による問題児の育成。他人の目を恐れる精神衰弱症(p.23)。
外向的感覚p.24-25生理的刺激を仲介し、客観的事実をそのまま受け取るリアリスト・現実の享受者。この機能に偏りすぎると、抑圧された直観が歪み「非現実的な迷信」にとらわれる(p.25)。
内向的感覚p.25-26外界の刺激よりも、それによって引き起こされる「主観の強度(内的現実)」を頼る(シャガール型)。外からは不可解・頑固に見える。表現手段がないと内的摩擦により神経症に陥る(p.25-26)。
外向的直観p.26-27物事の背後にある可能性を求めて行動する(特許、相場、未完の大器の掘り出し)。種はまくが収穫できず他人に成果を渡す。バグが起きると身体への囚われ(心気症)や恐怖症に(p.27)。
内向的直観p.27-28自分の内界に可能性を求め、心像世界を歩く。外界の事象にはひどく無関心。表現手段を得ると独創的芸術家や思想家になるが、無理に実際的作業をすると神経症に(p.28)。


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